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映画「ドーン・オブ・ザ・デッド」と |
ジョージ・A・ロメロ監督の傑作ホラー映画「ゾンビ」がリメイクされてよみがえり(まさにゾンビ化)
「ドーン・オブ・ザ・デッド」の作品名で公開されています。かつての「ゾンビ」はまさにゾンビの名を一般化せしめ、かつ物語も単なる化け物映画にとどまらない 哀愁さえ漂う秀作でした。 私はかつての「ゾンビ」を見てラストシーンで感動した覚えがあり、今まで見たホラー映画の中でもベストスリーに 入る作品です。 今回の特集は「ゾンビとは何か?」を正統な見地から説明させていただき、映画とは関係ないかもしれませんが、 何かの参考にしていただけたらと思います。 <作品データ> 2004年 製作国:アメリカ 配給:東宝東和 上映時間:1時間38分 監督:ザック・スナイダー| 脚本:ジェイムズ・ガン| 製作:リチャード・P・ルビンスタイン/マーク・エイブラハム/エリック・ニューマン| 制作総指揮:トーマス・A・ブリス/デニス・E・ジョーンズ| 撮影監督:マシュー・F・レオネッティA.S.C.| プロダクション・デザイナー:アンドリュー・ネスコロムニー| 編集:ニーヴン・ハウィー| 音楽監修:G.マーク・ロズウェル| 音楽:タイラー・ベイツ| 特殊メイク:デヴィッド・リロイ・アンダーソン| 衣装デザイナー:デニーズ・クローネンバーグ| ◆キャスト⇒ アナ:サラ・ポーリー| ケネス:ヴィング・レイムス| マイケル:ジェイク・ウェバー| アンドレ:メキー・ファイファー| スティーブ:タイ・バレール| CJ:マイケル・ケリー| テリー:ケヴィン・ゼガーズ| ニコール:リンディ・ブース| ヴィヴィアン:ハンナ・ロックナー| 公式サイト ●ゾンビについて本来ゾンビとは本来ゾンビとは、嫌われ者に対する制裁である。もちろんハイチにも刑法はあるが、ゾンビは刑法とは無関係の伝統的な制裁のひとつである。まずフグ毒・テトロドトキシンを主成分とする毒薬が嫌われ者の傷口にすりこまれる。神経毒であるテトロドトキシンは心筋や呼吸中枢を止め、仮死状態をつくりだす。医者も欺かれ死亡診断書を書いてしまう。そして毒の量が丁度良いと薬と呪術によって蘇生されるのだ。(毒薬の量が多すぎると本当に死んでしまう。) しかし1〜2日間という長い間無呼吸状態だったため脳の前頭葉は死んでいる。自発的意志のない人間、ゾンビの誕生だ。この状態のまま死ぬまで奴隷として働かされるのである。 この毒の起源はナイジェリアの小数民族でニジェールデルタに住んでいたエフィク人やカラバル人が使っていたものらしい。毒物に対する知識が進んでいた西アフリカ社会では伝統的な司法機関によって毒が用いられていた。その知識が奴隷たちによって持ち込まれたのだ。 一方土葬が中心であったヨーロッパには、埋葬したはずの死者が墓の中から甦るといった伝説や迷信が数多く伝えられていた。またよみがえった死者は生者を襲ってその生き血をすするとも信じられいた。 この両者を結び付け、「ソンビ=甦る死人」というイメージを定着させたのが、映画監督ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ三部作」である。 残念ながらハリウッド映画に出てくるような「不死身の化け物」はいない。だがゾンビが興味深い存在なのはまちがいない。 ところでゾンビが日本に紹介されたのは以外に古い。1963年に発売されたハリー・ベラフォンテ(「バナナボート」で有名な歌手)のライヴ・アルバム「グリーク・シアター・コンサート」第二集のB面に収録された「ゾンビ・ジャンボリー」がそれだ。日本版の解説には「米国南部の黒人の迷信にでてくる死者の亡霊ゾムビー」とある。 ゾンビという言葉はコンゴ語の「ンザンビ」からきているといわれ、その意味は「死者の魂」だという。 ゾンビの社会的意義いかなる社会においても掟を破ったものには恐ろしい罰が与えられる。ゾンビにされるというのはこの上なく恐ろしいはなしだが、歴としたとした社会的制裁の一種である。 都市と地方とが分断され、司法の力が十分期待できないハイチの地方社会では、伝統的なシステムによる制裁が欠かせない。社会の警備に責任をもつ土着のグループ。それを「秘密結社」とよぶ。 秘密結社というのはきちんとした学術用語で、文化人類学の世界ではおなじみの言葉である。(ショッカーとか世界征服とは関係ないので念のため。ジンベ・マスター、ヤヤ・ジャロ氏の著書「アフリカの智慧、癒しの音」(春秋社・1998年刊。訳者は日本におけるアフリカン・ダンスの草分け、柳田知子氏。僕のかつての先生です)に秘密結社の加入の様子など詳しい話がでています。興味のある方は一読してみてください。) ゾンビを作る毒は秘密結社によって管理され、その薬理的性質についての知識は遠く西アフリカの秘密結社から伝わってきた。ゾンビをつくるのは結社と結んだボコール(悪のウンガン。黒魔術師)である。ゾンビの謎の答は秘密結社の評議会の中で見つかるだろう。 クー・レールゾンビにする術はクー・レール(空気の術)、クー・プードゥル(粉の術)などとよばれ、ゾンビにする毒はトンべ・ルヴェ、ルティレ・ボナンジュ、チュェ、ルヴェなどいくつかの種類がある。ゾンビ毒の成分は昆虫、爬虫類、 むかでとタランチュラ、クラポー・ド・メール(海の墓=ハイチ近海では最も毒の強いフグ)などだ。 仕上げに入れる物がある。ママン・グエペに、マシャシャ。ダム・ケインに、ブフ・ビネ。いずれも刺や針や毛のある植物である。代わりに痒い豆(ムクナ・ブルリエンス)を用いることもあれば、微細なガラスの破片を練りこむこともある。 出来上った粉は、密かに家の戸口に撒かれる。さもなくば相手の肌に、直接吹きつける。薬の中の、棘やガラスが肌を傷つけ、そこから毒が浸透していく。 ゾンビの毒をたべると強力すぎて死んでしまう(ある例ではわずか17分で死亡)ので、狙った相手の食べ物に入れるのは厳禁である。テトロドトキシンには局所的な作用もあるので、毒は相手の皮膚に塗ったりパウダーにして顔に吹き付けたりする。 ゾンビ化の症状ゾンビ化はフグ毒を利用しているため、フグ中毒とそっくり同じ状態になる。フグ中毒の症状の始まり方とタイプは、人により、また摂取された毒の量により、大いに異なる。以下は典型的な一例である。まず毒がまわり始めると、皮膚の下を虫が這うようなむず痒さを感じる。それはしだいに激しい痩れに変わる。この症状が現れたらもう手遅れだ。痩れは全身に及び、まるで身体がふわふわ浮いているようだ。ふわふわ浮いている感覚は埋葬されたあとも延々と続く。 ほどなくして、呼吸困難になり息苦しさを覚える。……唇や手足、そして全身が死人のように青白くなる(チアノーゼ)。喉に綿を詰めた苦しさ。筋肉の痙畢がはじまり、身体が麻癖する。最初に麻痩するのはのどや口で、その結果、かすれ声しか出なくなり、嚥下困難、完全な嚥下不能が生じる。やがて全身麻癖状態になりまったく身体を動かせなくなる。 これらの自覚症状に、医師は平常以下の体温、血圧の低下、を付け加ることだろう。弱々しく速い脈拍、多量の唾液や発汗、極度の虚脱感、頭痛、が普通その初期に現われ多くの患者は腹部が膨れ上がる。 胃も裏返らんばかりの嘔吐を伴う消化不良、下痢、腹痛、肺浮腫、尿毒、急激な体重減少、などいくつもの症状を併発し数時間で医師も匙を投げるようになる。最期が近づくにつれ、患者の目はどんよりとなる。瞳孔は初め収縮し、のちに拡大する。瞳孔と角膜の反射は失われる。 新陳代謝が大幅に低下しついには呼吸が停止する。(京都の医師による1977年のふぐ中毒患者の報告によるとちょうど脳死と同じ状態だったそうだ)死亡宣告。しかし犠牲者の意識ははっきりしている。回復後その経験についてたずねられると、すべてを詳しく話すことができるのだ。 ゾンビは埋葬後七十二時間までのあいだに連れ出される。その際解毒剤を飲まされるのだが、これがくせものだ。実はこの解毒剤には効果がない。そもそもテトロドトキシン中毒は生きるか死ぬかで、生き残ったものは自力で快復できるのだ。 心の病が原因で体も病になることはよく知られている。同様に社会がそこに住むひとびとの心の中でしか意味をもたない肉体的な病気を起こすこともあるのだ。たとえばアボリジニのメディシンマンが大トカゲの骨を持ち歩いて死の呪文を唱えている間に、その骨がある人物を指すと、その人は必ず病気になりほとんどが死んでしまうのだという。 ハイチでも同じメカニズムが働いている。自分はゾンビにされるのだと悟った者は、子どもの頃から禍を期待するように条件づけられているので無意識のうちにヴードゥー社会の期待に沿うようにしてしまうのだ。これを「ヴードゥー・デス」とよぶ。ゾンビの毒で「一度死ぬ」メカニズムは科学的なものではある。しかし術の支えでしかない。「ヴードゥー・デス」の働きこそ大きいといえるだろう。鰯の頭も信心から、である。結局のところゾンビ化の大きな決め手は犠牲者の信仰心なのだ。 解毒剤ゾンビの毒には、その土地土地で認められている「解毒薬」なるものがある。しかしどの場合もこれという薬理作用がない。もし真の解毒薬があるとすれば、それはゾンビの胡瓜である。「ゾンビのきゅうり」はハイチ名で学名はダツラ・ストラモニウム。(シロバナヨウシュチョウセンアサガオ。)幻覚作用を持つ植物である。 フグ毒に対する解毒薬は知られていないが、実験室においては、アトロピンやシガテラが症状を軽くすることが明らかにされている。 ダツラ・ストラモニウムは、アトロピンとスコポラミンを含有しており、したがってゾンビの毒に対する強力な、しかし未確認の、中和物質として働いているのかもしれない。 この解毒薬は同時に、ゾンビ状態を生じさせ維持するのを助けてもいた。というのも、もしフグ毒・テトロドトキシンが生理的基盤になって、その上でヴードゥー社会の信仰と恐怖が作用するいるとすれば、一方ダツラは、そういう精神的過程(ヴードゥー・デス)を何千倍にも拡大することを約束していた。 単独でもダツラによる酩酊は、誘発された精神病的語妄を特徴とし、見当職障害、顕著な意識混濁、完全な記憶喪失を引き起こす。すでにテトロドトキシンの影響を蒙った人間、すでに地下を通ってきた人間に与えられた場合のその恐ろしい心理的結果は、想像することもむずかしい。というのも、そういう酩酊のさなかにゾンビは、新しい名前を与えられ、新しい存在として社会的適応を行なうよう、よその土地へ連れていかれるからだ。 ボコールたちはいう。一人の人間がゾンビ化すると、二種類のゾンビが生まれる。よみがえった肉体はゾンビ・カダーヴルになり、肉体から分離した霊魂の一部は、ゾンビ・アストラルになる。われわれがゾンビと呼んでいるものは、肉のゾンビことゾンビ・カダーヴル、個人としての記憶も意識も失った廃人のことである。自分を作りだしたボゴールの意のままに、新しい名前を与えられ、奴隷として売り払われる。 ゾンビの霊魂は、壷の中に封じ込まれる。 これがゾンビをづくる一連の流れである。 ハイチやジャマイカ(パトワではゾンビをダピーとよぶ)では死体がよみがえらないように様々な手段をとるのだという。 死後36時間以上たつと死体はよみがえらないので、一日半墓場を見張る。死体を切りさく。死体に毒を注射する。服の裾や袖を釘で打ち付ける、などなど。 ゾンビは決して絵空事ではないのだ。 仮説新世界一帯にアナンシーの伝説が伝わり、北はニューオリンズから南はトリニダードまでコンゴ起源の「カレンダ」(kalenda。アフリカの豊穣神を祭る儀式に端を発するセクシャルなダンス)というダンスが踊られている事実を鑑みると、広く新世界一帯にゾンビ生成の技術が伝わっていると考えるのが普通ではないだろうか。すくなくともジャマイカには「ダピー」とよばれるゾンビが存在する。 ゾンビは非常に歪んだハイチ像をでっち上げるのに都合がよかったので利用されたにすぎない。世界初の黒人共和国というハイチの存在はアメリカにとって邪魔だった。奴隷解放は非常に困った事態であり、ハイチだけに封じ込めておきたかったのだ。そこでハイチのイメージダウンをはかった。 ゾンビ化の技術がアフリカから伝わったのであれば、ゾンビはハイチだけの存在であろうはずがない。おそらくアメリカス一帯にうつろな目をした廃人たちが徘徊しているに違いない。 |