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レイ・ハリーハウゼンとダイナメーションの世界 |
レイ・ハリーハウゼンというと、初めてであったのは高校時代に見た、「シンドバッド黄金の航海」。このとき、初めてダイナメーションというストップモーションを使った
アニメーション技術を目にした。精巧に作られたミニチュアがぎくしゃくしながらもそれがまた不思議と実在しない怪物などのムードを盛り上げて、われらがシンドバッドと剣を交えるという とっても楽しいものだった。 ミニチュアの動きと人間の動きの合成が本当に困難で、様々な苦労と膨大な時間が必要であることを解説に書かれていた。 CGが発達した今日、このような特撮映画の技術を使おうという映画人はいないかもしれないが、スムーズな動きがないからこそ生まれる神秘の世界、 というのもあることは確かだ。 昨年、レイ・ハリーハウゼンのシリーズが限定版のDVDBOXになって発売されると、あっという間に売り切れて、あまりの要望に、今年、単品で再度発売されるという事実 からも、ハリーハウゼンのファンがいかに多いかの証明であると思う。 今日のなんでもCGに頼りすぎる映画世界にもう一度、特撮の意味を考えていただきたくてこの特集を組みました。 データ等は優秀なデータ集がたくさんあるのでそちらを引用させていただきましたのでよろしくお願いします。 ◆プロフィール 南カリフォルニア生まれ。 ロサンゼルスの市立大学で演劇・撮影・彫刻を学んだ。 1933年の『キング・コング』でショックを受け特殊撮影に興味を持ち、ジョージ・パル製作の16ミリ「PUPPETOONS」から映画に従事。 第二次世界大戦で3年間陸軍通信隊に従軍した後、自主制作で短編人形アニメーション映画『マザー・グース物語 Mother Goose Stories』『赤ずきんちゃん Little Red Riding Hood』『ヘンゼルとグレーテル Hansel and Gretel』『ラプンツェルのお話 The Story of Rapunzel』『ミダス王のお話 The Story of King Midas』の5作品を製作。 この作品は全米の学校や教会を販路として配給された。 6本目となるはずだった『ウサギとカメ The Tortoise and the Hare』は未完成に終わった。 『キング・コング』以来憧れていたウイリス・H・オブライエンに会うチャンスを得たハリーハウゼンは自分で製作した16mm作品を評価され、彼の下で初の長編作品『猿人ジョー・ヤング』にヘッドアニメーターとして参加した。この作品は1949年度のアカデミー特殊効果賞を獲得してハリーハウゼンの名は多くの人の知るところとなった。 本格的デビュー作となった次作『原子怪獣あらわる』の原作者レイ・ブラッドベリは、彼の少年時代からの友人。水爆実験により北極で甦った怪獣がニューヨークを襲う本作は、1954年の『ゴジラ』に大きな影響を与えた。実写と一体となった、独自のストップ・モーション・アニメーション手法を用いた立体アニメーション映画を、自ら「ダイナメーション」(スーパーダイナメーション、ダイナラマとも言う)と呼称した。 『タイタンの戦い』以降は映画制作から離れ、ロンドンに居を構えて講演やSFコンベンションなどで活躍。 1992年には、アカデミー特別賞を受賞している。 ◆ダイナラマの魅力に迫る 1)照明効果 多くの着ぐるみ特撮の怪獣達は、照明の中で暴れているのに対し、ハリーハウゼンのモンスター達は、炎天下の照りつける太陽の下をのし歩いていたのだった。 2)人物との合成 ブルースクリーンによる、つなぎ目の見えやすい合成とはひと味もふた味も違う、フロント・プロジェクションをメインにした合成によって、彼のモンスター達は人間と「絡む」のだ。 「グワンジ」は、カウボーイに投げ縄を掛けられ、「カーリー像」は六刀流でチャンバラをしていたし、「骸骨兵」などは主人公との一騎討ちにとどまらず、集団による大殺陣を生身の人間とやってのけた。 これは、物凄い事である。(今現在CGと実写の合成を行っている人ならそれがどんなに困難なシーンか理解していただけるだろう)とにかく、怪物達は人間と一緒に「その場」に居るのだ。 それは数十年たった今観ても決して見劣りしない、物凄いマジックなのだった。 3)個性的で、魅力的なキャラクター達 彼のデザインした怪物達は、どれもが立派な主役でした。 強面の「サイクロプス」、忠実な番犬のような「ドラゴン」や「ハイドラ」、暴れまくる「リドサウルス」、妖艶な恐ろしさの「カーリー」、恐ろしい「メデューサ」などは、歩く魔神そのものであった。(彼女は髪の毛だけでなく、下半身も蛇だった。ガラガラ蛇のように尻尾の先を鳴らしながら、暗闇の中を追跡してくる彼女は、普段は直立しているのだが、階段を降りるときなどは、腹這いになってズルズルと進むのだ)見事なまでの造型センスと絶妙な芝居の付け方で、彼のキャラクター達は完全に主演俳優を越えていたといえる。 4)ストップ・モーション・アニメーションならではの動き ストップ・モーション・アニメーションとフロント・プロジェクションを組み合わせた、彼の撮影手法を「ダイナメーション」と言う。 関節が自由に曲がるモデルを一コマずつ撮影してゆくこの技法には、唯一弱点があると言われている。 それは、実際に動いている物を撮影したときに起こる画像のぶれ、「モーションブラー」が起こらないということである。 この「ぶれ」が無いモデルの動きは、カクカクとした不自然な物になってしまう。 事実、のちのアニメーター達は、この問題を解決すべく、様々な手法をあみ出している。(ILMのゴーモーション・システムは有名である) しかし、動きを必要以上に滑らかにする事は無いと考える。 恐竜などの実在した生物ならまだしも、「シンドバット〜」や「アルゴ」「タイタン」などのマジカルなシーンには、むしろあの動き方のほうが合っているのだ。あのカクカクとした動きこそが、魔法の怪しさを倍増させているのだ。 それは、「ヤン・シュバンクマイエル」や「イジー・バルタ」の作品のごとしである。 もし、チェコのアニメ作家のモデルがするすると滑らかに動いたら、あの怪しい雰囲気が出せただろうか? あの独特の動きは、アーティストの「個性」なのであって、「ストップ・モーション・アニメーションの限界」ではないのである。 ハリーハウゼンのダイナメーションに「モーションブラー」なんて必要ない。 |
| 作品集 |
| 作品名 | 解説 |
![]() 『猿人ジョー・ヤング』 | (1949 : Effects Technician) ジョーが火事から女子を助けて絶命する姿に涙。ハリーハウゼンはアニメーターとして参加。 1999年の『マイティ・ジョー』は本作のリメイクである。 |
![]() 『原子怪獣現わる』 |
(1953 : Animation Effects) 本人曰く、「いろいろな動物の要素を足して作った」という「リドサウルス」は、まるで狂犬のような形相で暴れまくっていた。日本のゴジラの元になったかどうかは定かでは無いが、US版『GODZILLA』は、明らかにこちらのリメイクであった。 |
![]() 『水爆と深海の怪物』 | (1955 : Special Effects) ゴールデン・ゲート・ブリッジを大ダコが破壊する。しかし、この大ダコの足は予算の都合で実は6本しか無かった。 |
![]() 『空飛ぶ円盤地球を襲撃す』 | (1956 : Special Photographic and Animation Effects) モンスターこそ出てこないが、やはりストップモーションでカクカク回転するUFOは、やはりインパクト大。ティム・バートンが『マーズ・アタック』でパロっていた。 |
| 『動物の世界』 | (1956 : Effects Technician) 動物の記録映画ではあったが、恐竜のシーンのアニメートのみを担当。 |
| 『The 27th Day』 | (1957 : Flying Saucer Effects) |
![]() 『地球へ2千万マイル』 | (1957 : Visual Effects) 金星から帰還したロケットによって持ち帰られた金星竜「イミーア」が急成長。ローマのコロッセオで大暴れする。見どころは、実在の巨獣である象との対決。 |
![]() 『シンバッド七回目の航海』 | (1958 : Associate Producer, Creature-fx) 悪の魔術師にミニチュアサイズにさせられた姫を救う為、シンドバッドは巨人「サイクロプス」の棲む島へと旅立った。初のカラー作品である本作は、まさにハリーハウゼンの代表作であると言えよう。一つ目巨人、双頭の鷲、火を吹くドラゴンなど見どころが満載。特に、ガイコツとの一騎討ちは、イタリアのフェンシング五輪チャンプ、エンツォ・ムスメッキ・グレコを殺陣師に迎え、映画史に残る名シーンとなった。 |
![]() 『ガリバーの大冒険』 | (1960・日本劇場未公開 : Visual Effects) ストップモーションのシーンが無い、ハリーハウゼンとしては異色の作品。 |
![]() 『SF 巨大生物の島』 | (1961・日本劇場未公開 : Special Visual Effects) 『海底2万マイル』の事実上の続編。とは言う物の、そこはそれハリーハウゼン映画である、古代の巨鳥、アンモナイト、大蟹などの怪物が満載。特に、巨大蜂のシーンは秀逸! |
![]() 『アルゴ探検隊の大冒険』 | (1963 : Associate Producer, Special Visual Effects Creator) ハリーハウゼン本人が「15編ある自分のファンタジー映画の中で最も気に入っている」と言っていた傑作!鳥人「ハーピー」が複数でバタバタ飛び回り、「ハイドラ」の首は7本もグニャグニャとうねり、青銅の巨人「タロス」はヒビが入ってバラバラ、ガイコツ兵は今度は軍団で大殺陣!と、見せ場の雨あられである。とにかく動いている物の数が多い。制作者側から見れば、かなりタフな大作である。 |
![]() 『SF 月世界探検』 | (1964・日本劇場未公開 : Associate Producer, Visual Effects) 普通のフィルムに強制的にワイド画面を取り込むアナモルフィック・システムで撮影された変わり種な作品。昆虫人間な「月世界人」や、モスラ似の「ムーンカーフ」などが登場するも、ストップ・モーション映画と言う程では無かった。 |
![]() 『恐竜100万年』 | (1966 : Special Visual Effects) 原始人の部族どうしの対立と、恐竜との戦いの日々を描く、ハリーハウゼン初の自前恐竜映画。ラクウェル・ウェルチのビキニも凄かったが、生き生きとした恐竜達は、現在の第一線で活躍する古生物学者(!!)にすら、多大な影響を与えた。実際、『ジュラシック・パーク』が登場するまでは、この映画こそが恐竜映画の代表だった。 |
![]() 『恐竜グワンジ』 | (1969 : Associate Producer, Visual Effects) 恩師、ウイリス・H・オブライエンの企画を実現。主役の「グワンジ」は、只の恐竜に留まらない、強いキャラクターであった。敵を威嚇するさいに、歯をガチガチ鳴らす仕種が格好良かった。 |
![]() 『シンドバッド黄金の航海』 | (1974 : Producer, Story, Special Visual Effects) 「七回目〜」より一層怪し度を増してパワーUP。なんといっても女神像のダンスと六刀流チャンバラは見物である。 |
![]() 『シンドバッド虎の目大冒険』 | (1977 : Producer, Story, Visual Effects) 前2作と比べられて、厳しい評価を受けがちであるが、脚本も映像もなかなか優れた作品。一角クロマニヨン人とヒヒにされた王子とのやり取りは、良いシーンである。 |
![]() 『タイタンの戦い』 | (1981 : Producer, Visual Effects) ひさしぶりのギリシャ神話物。悪役の醜さと卑劣ぶりがUP。「メデューサ」恐すぎます。(個人的には地獄の番犬「ケルベロス」が格好良かったと思う) |